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私のライヘンバッハ・ヒーロー

君はオンリーワンでナンバーワン

私を構成する9冊の本

読書
Twitterで『#私を構成する9冊の本』というタグが回ってきた。うんうん考えた結果、以下の9冊が私を構成している主な9冊(だと思う)。




深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)


“ある朝、眼を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。”

そんな書き出しで始まるこの本は、インドのデリーから、イギリスのロンドンまでを、バスだけを使って一人旅をするという目的で日本を飛び出した主人公(=沢木さん)の物語であり、筆者自身の旅行体験に基づいている、言わずと知れたベストセラー。

小学生の時に読んで以来、何度も読み返しているせいで表紙はボロボロ。何回読んでも面白くて、夢中にさせる本。たぶんこの本で人生を変えられてしまった人は少なくないはず。心に残る本というのは探せばあるが、その人の生き方を変えてしまうほどの何かを持つ本というのはなかなか巡り会えない。この本はそれくらいの強い熱量を持ったもの。

文庫で6冊となるこのシリーズは一度読み出すと止まらないほどおもしろく、著者の旅行体験に基づいている話なので堅苦しくなく、普段あまり読書をしないという方にもオススメ。何より、独特の文体、その土地の温度や匂いまで文字から伝わるような文章に引き込まれるはず。



2 カラフル(著:森絵都)

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)


自殺したはずの「ぼく」は天使からもう一度、人間としてやり直せるチャンスを貰い、ある少年の体に入り込み、少年として生活を始める。再挑戦の期間は約1年。その間に、前世で犯した過ちの大きさに気づくことができれば、という条件付きで。

私がこれを読んだ時は中学生、思春期真っ盛り。毎日だらだらと何も考えずに過ごしているくせに、ふと漠然とした不安に襲われる、そんなありきたりな毎日。別に死にたいって、そんなたいそれたことは思ってはいないけど、ふと「私ってなんなんだろう」「何のために生きているんだろう」と考え、悲しくなったり、嫌になったりすることは、人生の中で一度や二度はあると思う。そんな時に、思い出すのが『カラフル』。

決して説教じみたことを安易に言っていないのに、読み終わったあとに、心の中に確かに強く暖かなものが残る。色々あるけど、ややこしくてめんどくさい、時に目も眩むほどの色にまみれたこの世界を生き抜いていこう、と思える、ホットミルクみたいな1冊。

“人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。”


3 ノックの音が(著:星新一)

ノックの音が (新潮文庫)

ノックの音が (新潮文庫)



15編全ての短編が、『ノックの音がした。』で始まり、そしてそれぞれに秀抜な結末に到る、ショート・ショート集。さりげないノックの音。ドアの向こうに待ってるのは、果たして何?

1編1編はとても短く、字数も限られている中、ここまで完成されたストーリーを展開させられるのはさすがとしか言えない。天才。小学生の時に星新一の本を初めて読んで以来、その才能に嫉妬する。別に文書かないけど。そのくらいユーモアに溢れてる。

最後の1行でひっくり返るストーリーや、ページを進める事に話が全く違う方へ展開していく様は、圧巻。ページをめくる手が止まらない!1編が10ページ程なので、誰にでも読みやすいはず。ちなみに私が特に好きなのは『しなやかな手』と『感動的な光景』。


4 自宅にて(著:新藤晴一)

自宅にて

自宅にて


ポルノグラフィティのギタリスト、新藤晴一による初のエッセイ集。ブータンへの旅行記から、東京に出てきてからのことなど、彼の「心が動いた時」を綴った文章。

ポルノグラフィティのファンのバイブルともいえる1冊。この本をなくして、新藤晴一を、ポルノグラフィティを語ることはできないと思う。日常のなんてことない一コマも、新藤さんの視点では違って見えるようで、この本を読んだ後、少し彼と同じ視線で世界を見れた気持ちになれた。文章を読むと、とても繊細で感性が豊かな人柄が伺える。何より、言葉をとても大事にしているんだな、と再確認する。新藤晴一は生まれながらの詩人で、言葉に愛された人なんだな。

私を楽しい気分にさせてくれる人や物はたくさんあるけれど、辛い時私の中にあるものはポルノグラフィティであり、岡野昭仁の唄であり、新藤晴一の言葉。

“それは確かに動いた心をなかったことにしてしまうのが、自分の心に失礼だと思うからです。そこに意味なんていらないと思います。”


5 猫を抱いて象と泳ぐ(著:小川洋子)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)


「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出していく…。

先天性の病気を抱え、大きくなるのを不幸なことだと信じ続けた主人公、リトル・アリョーヒンと呼ばれる少年。デパートの屋上に上がったまま大きくなりすぎて下りられなくなった象、インディラ。壁の間に挟まれて抜けられなくなってしまった少女、ミイラ。バスの中に住み、太りすぎて出られなくなったマスター。この中に出てくる人たちはどこかおかしくて、浮世離れしている。しかし、もしかしたらこの世界の端っこに、彼らは生きているのかもしれないと思わせるリアリティーさを併せ持つのが、小川洋子の凄さ(登場人物の国籍も、時代も、主人公の名前すら明記されていない)。ここに書き出される8×8の世界は、どこまでも透明で、深海のような静けさだ。

終始チェスの話である。ページをめくっても、まためくっても、チェスの文字。この作品に出てくるチェスとはただのチェスなのではなく、チェスそのものがリトル・アリョーヒンなのである。リトル・アリョーヒンは勝ち負けは気にしない。美しい棋譜を描くことだけを至上としているのだ。そして彼が死に、忘れ去られたあとも、棋譜だけは永遠に残っていく、この永遠が儚くて哀しくて愛おしい。

1冊の本としては1番好きだと言える本。1ページ、1行、そして単語すべてがこんなにも美しく、大事にしたいと思ったのはこの本だけである。ゆっくり時間をかけて、【e4】から出発するリトル・アリョーヒンの棋譜を読み解いてほしい。
“「計算上、チェスの可能な棋譜の数は十の一二三乗あるんだ。宇宙を構成する粒子の数より多いと言われているよ。」”
小川洋子だと『最果てアーケード』と『密やかな結晶』も好き。あと『博士の愛した数式』もやっぱり名作。



6 ぶらんこ乗り(著:いしいしんじ)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)


頭がよくお話作りが大好き、ぶらんこが大好きで指を鳴らすのが得意、声を失っても動物と会話ができた弟が残したノートを読みながら回想する、姉の物語。

ポルノグラフィティファンの本棚を覗いたら、『自宅にて』と一緒に並んでる確率が高いであろう、1冊。私も例に漏れず、この本を知ったきっかけは新藤晴一であった。ポルノグラフィティの6作目のオリジナルアルバム『m‐CABI』に収録されている『グラヴィティ』という曲の詩を書く際、新藤さんがこのいしいしんじの『ぶらんこ乗り』を参考にしたと雑誌(確かWHAT's IN?)のインタビューで語っていた。

いしいしんじの作る世界は絵本のようだと思う。でもどこまでもファンタジーではなくて、冷たい現実が見え隠れしている。そんなどっちつかずの世界こそが、空中ブランコなのかもしれない。どこにも属さない、宙ぶらりんな、そんなつながり。

難しいことは言わない。この本を読んだ後、歌詞を見ながら曲を聴いてほしい。そこに全てが詰まっている。あ、ちなみに、いしいしんじ作品だと『麦ふみクーツェ』も好き。

“ぶらんこは行ってはもどりする。はるかかなたへ消えたようでも、ちゃんとまっしぐらな軌道をえがき、ちょうどいい引力に従って、もといた場所に戻ってくる”



7 Breakfast at Tiffany’s (著:Truman Capote)

Breakfast at Tiffany's

Breakfast at Tiffany's


あまりにも有名な『ティファニーで朝食を』。自由奔放に生き、「いつかティファニーで朝食を取るような人になりたい」と夢見るホリーと、彼女に翻弄される男達の物語。

私は洋書はできる限り訳を介さず原書のまま読みたい派なので、英文で読んだ。この作品はオードリー・ヘップバーン主演で映画化されたこともあって、誰もが名前は聞いたことはあると思う。しかし、案外ストーリーは知らない人が多いのではないだろうか。また、映画と小説のストーリーも異なっているため、映画でしか知らない人にもぜひ読んでほしい。

ホリーのどこまでも自由で掴めない性格こそが、この作品が長きにわたって人々の心を離さない理由の一つだと思う。映画のホリーも魅力的ではあるが、原作のホリーはより奔放さが強調されている。無邪気、といえるほどかわいらしいそれではなく、本文内でも「まやかし」だと形容されているように、それに翻弄される人たちからみたら、厄介なくらい自分の気持ちの赴くままに生きているホリー。あんな風に生きてみたいけど、誰もが不可能だと自覚しているからこそ、ホリーに対し畏敬の念のようなものを持つのかもしれない。

原作とは関係ないけど、映画でホリーがニューヨークのアパートの窓辺で故郷を思いながらMoon Riverを唄う場面はやっぱり名シーンだよね。センチメンタルー!ちなみに歌詞中に出てくるhuckleberryはアメリカ人にとっては、「故郷」や「幼なじみ」を連想させる単語らしい。

“Moon River,
Wider than a mile:
I’m crossin’ you in style
Some day.
Old dream maker,
You heart breaker,
Wherever your goin’,
I’m goin’ your way:
Two drifters,
Off to see the world,
There’s such a lot of world
To see.
We’re after the same
Rainbow’s end
Waitin’ round the bend,
My huckleberry friend,
Moon River
and me.”


8 フィンガーボウルの話のつづき(著:吉田篤弘)

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)


「世界の果ての食堂」について話を書きたいと思っている吉田くん。でも物語は見えてこない。ゴンベン先生に相談したりもするけれど、まだ話のしっぽはつかめない。でもある時みつけた小さな博物館で、ジュールズ・バーンという人を知る。その人は小さなメモに大量にお話を綴っている人だった。いつしか物語は、バーンの世界に、そしてビートルズホワイトアルバムを巡る物語へと動いていく・・・

小川洋子いしいしんじ(初期らへん)が好きな人はおそらく吉田篤弘ハマると思う。少しファンタジックな、シャボン玉のような絵本のような独特な世界観を持つ作品を書く人。今回は短編なんだけど、繋がってないようでどこかで確かにリンクしている、そんな短編集。そして、鍵となるのがビートルズホワイトアルバム。著者が「ホワイトアルバムをちょっとした仕掛けにすれば、すぐそばとものすごく遠いところの話がさほど不自然でなく、すんなり収まるのではないかと思いついたのです」と語るように、ありふれた日常とおとぎ話みたいな世界が混在している。どこか謎めいて、切なくて、でもおかしい。

そもそも私がビートルズホワイトアルバムが好きだから、いろんな意味でおいしい。もぐもぐ。のんびりとしたほっと一息つける作品。土曜日の夜に紅茶でも飲みながらまったり読みたい。



9 英単語TARGET 1900

英単語ターゲット1900 5訂版 (大学JUKEN新書)

英単語ターゲット1900 5訂版 (大学JUKEN新書)


自分でもハ???って思うけど、「私を構成する9冊」って括りならこれを外せないなって…… 「好きな9冊」とか「おすすめしたい9冊」だったら間違いなく入らないけど。長い付き合いでしたね。中学生から高3の受験が終わるその日まで、基本的に学校がある日は毎日鞄に入れて持ち歩いてた(小テストがしょっちゅうあった)。受験期に周りの友達がシス単やキクタンに乗り換える中、特に理由はないけど買い換えず英単語帳=TARGET一筋だったよ、褒めてほしい。別に特に見やすいとかわかりやすい訳ではないんだけど(ごめんなさい)、6年間見てるとさすがに単語見て「あっこれあそこのページの上から何個目だな」って覚えてくるレベルで私の中に溶け込んでる。だからTARGETって聞いてまず思い出すのはポルノグラフィティのツアーの∠TARGETじゃなくて、こっちの方だし、∠見る度にこのわんちゃん思い出す。ほんとどうでもよすぎて死にたくなってきたから終わる。お世話になりました!